Lapin Labyrinthe (ラパンラビラント) Vol.5に掲載していただいたので感想など

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はじめに

Lapin Labyrintheは、愛好家の方が編集しているロリィタファッション専門のファッション誌です。

毎年、春と秋の年2回発売されていて、現在の最新刊はVol.5となります。

若年人口の減少やインターネット・SNSの普及による価値観の多様化の影響を受けて紙媒体の雑誌の需要が減少する中、ロリィタファッションを専門とする紙媒体を復興しようという理念かは発行されていると聞いています。

今回、私の撮影した写真を掲載していただいていますので、内容全般について紹介したいと思います。

Lapin Labyrinthe Vol.5の内容と感想

巻頭には青木美沙子ちゃんをはじめとする数人のモデルさんと、ファッションブランドを紹介するパートがあり、その後にそれを着こなすロリィタさんたちの綺麗な写真が続くという構成になっています。(私の撮影した写真もこちらのコーナーに掲載されています。詳細後述。)

率直な感想として、全ページカラーでこれだけ多くの写真を紙媒体で見られるのに対してこの値段設定(通常版1,900円)は非常に安いです。

コンテンツについては、いくつか気がついたポイントがあるので書いていきます。(後日更新するかも)

1点目。世界観が統一されている。

1点目は、フォトグラファーとしての視点です。

私が撮影担当させていただいた箇所を含め、沢山のフォトグラファーを使ってページ構成しているのですが、それぞれの現像・レタッチの癖や色の違いをあまり感じさせず、雑誌としての統一感がしっかり確保されています。

そして、そのおかげで、余計な事を考えず純粋に写真を楽しみながらページをめくり続けることができます。

これは、「1冊の雑誌としてまとまった世界観を作る」VS「それぞれの個性を生かす」という相反する要素を両立させるているという事です。編集の方がとても良い仕事をされていると思います。

2点目。文字情報が多い。

本誌の中ほどに、美沙子ちゃんのインタビューを掲載したページがあるのですが、(いい意味で)読みづらい程文字がぎっしり詰まっています。

本誌は全体的に写真や文字がしっかり詰め込まれていて情報量が多い印象ですが、特にインタビューページに関しては話し手の意図をしっかり伝えるという明確な意志が感じられましたし、実際に時間をかけるだけの読み応えのある、内容のしっかりしたインタビューだと思います。

3点目。手書きメッセージがエモい。

それぞれのモデルさんによる、手書きの「ひと言メッセージ」が書かれていてとてもエモいです。

「好きに振り切ったお洋服を着て外出する」と書けば当たり前に聞こえるかもしれませんが、それを実行するのは並の覚悟でできる事ではありません。

だからこそ、僕は全てのロリィタ様を尊敬していて、そのような「格好いい」姿を写真に撮りたいと考えています。

彼女ら(もしくは彼ら)は、基本的にはファッションを通じ「不言実行」しているので思想について多くを語りませんが、だからこそ本誌のような機会をとらえてひと言書かれていると(しかも手書きで!)、改めて最高に格好よく、そしてエモいです。

4点目。自分の撮影した写真が掲載される嬉しさ。

見開き1ページで、私の撮影させていただいたモデルさん(ivkさん)のお写真が掲載されました。

この嬉しさは、手にとって読んでみるまではわかりません。

私は過去に自分で同人誌(漫画)を発行してコミックマーケットで頒布していたのですが、その新刊が刷り上がった時の感覚を思い出しました。普通に感動です。

モデルさん(ivkさん)と併記する形でフォトグラファーネームを掲載していただきました。

おわりに

出来上がった雑誌を読みながら、モデルのivkさんと意見交換してきました。

「お互いの解釈が一致しているか」、つまり「仮に自分が写真を選択するとしても同じ写真を選ぶか」という話で少し盛り上がったので、私が考えるこの日のベストショットを載せておきます。

真冬の撮影という事もあり、敢えて直射日光を上手に使う事ができた写真は、自分なりに高度な表現を使って印象的な写真を撮影できたという達成感(自己満足)を感じているので思い入れがあります。

また、偶然や被写体の方のふとした仕草から生まれる「瞬間」こそに美を感じるので、そのような切り取りに成功した写真にもとても思い入れがあります。

余談〜紙媒体の雑誌について

少年ジャンプやマガジン等の週刊誌に代表される紙媒体の「雑誌」は、ハイレベルなクリエイターによる作品と出版社の編集による合わせ技で一定の品質を担保し、そこに広告を掲載する事によって、高品質の作品や情報を安く大量生産し、沢山の読者に届けてきました。

2000年代くらいまでの雑誌全盛期には、雑誌は文化の担い手でもありました。SNSなき世界では、全てのクリエイターは限られたメディアを通じて作品を発表する事が成功のモデルケースであり、個人による発信活動は事実上不可能であったためです。

2023年現在、紙媒体の雑誌が担ってきた「文化を発信する」という役割は、SNSに完全に取って代わられているように感じます。

しかし、本当にそうでしょうか。SNSは、かつで雑誌が担ってきた全ての役割を果たすことができているのでしょうか。

私はそうではないと思います。

私は過去に、雑誌を通じて自分が興味をもっていなかったコンテンツや、見たくないような情報に出会う事がありました。雑誌という完結したメディアの中で、ページをめくるという物理的な動作を通じて偶然の発見に出会うという事です。

時に不快と感じる事もありましたが、振り返ってみれば自分の世界を広げる上でとても役に立つ体験でした。

SNSでは、そのような体験は難しいかもしれません。

SNSのアルゴリズムはとても賢くなっているが故に、個人に最適化された(=その人が好むであろう)情報を自動的に選別して表示します。逆に言えば、アルゴリズムの勧めない情報に触れ為には、アルゴリズム以外の影響を受ける必要があるという事です。

私は、世の中のデジタル化がどれだけ進んでも、一定程度リアルなネットワークは必要だと考えています。人間は、自分の見たい情報しか見ようとしない生き物であるからこそ、時に興味のない情報や不快な情報にも触れる事が社会の分断を緩和する事につながると思うからです。

もちろん、過去に雑誌が担ってきた「負の役割」まで含めて雑誌文化を全肯定するものではありません。

しかし、デジタルは万能ではない、あるいはデジタルには担う事のできない領域は存在すると思います。

本誌は、「電子化」という時代の流れに逆行しているようでいて、芯を食ったコンセプトの上に制作されていて、とても共感しました。

微力ではありますが、ささやかなサポートとして宣伝などしてみようと思い記事を書かせていただきました。

Vol.6も楽しみにお待ちしたいと思います。

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